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DS3(欧州仕様)
2010-05-26

採点表

8
動力性能
“ホットハッチ”として文句ナシの加速力。
8
操縦安定性
“硬派”なセッティングで操安性高し。
8
パッケージング
ユニークな見た目に反して、ハイレベルな実用性。
7
安全性能
このカテゴリーの水準点をしっかりクリア。
7
環境性能
自慢のディーゼル版が導入されないのは残念。
7
総合評価
“未開地”への市場参入は、それなりにリスク有りか。

過去と袂を分けた新DSブランド。

 「既存のラインナップに加え、スタイル、デザイン、洗練されたものへのさらなる拘りを求めるお客様に提案をする新たなモデルレンジ」――シトロエンは昨年、こうした意図を持って開発したモデルに『DS』の名を与えると発表した。
 古くからのファンにとってそんな2文字を持つモデルとは、奇抜なルックスと先進的な技術内容から一世を風靡した1955年に発売の“あの名車”をイメージするはず。しかし、ここで紹介のDS3を皮切りに今後DS4、DS5と続いて投入予定の新時代のDSシリーズは、そんなかつてのモデルとは一線を画すのみならず、むしろ「昔を懐かしむレトロの流行に反するもの」と断言している。
 “アンチレトロ”で、“革新的でモダンな答えをシトロエンの歴史に刻む”存在の第一弾としてリリースされたDS3は、その車名からも察する事が出来るように、ひと足先にワールドデビューを果たした新型C3が骨格のベース。
 見方によっては、「C3の3ドア版」としての役割も担うと読み取れるのがこのモデル。だから、ライバルと目されるBMWミニや、フィアット500などとは、ちょっとばかり生い立ちが異なるわけだ。

試乗データ
レポート日:2010-05-26試乗日:2010-02-14
レポート:河村康彦試乗地:フランス・パリ周辺
撮影:プジョー・シトロエン・ジャポン天候:晴れ

見た目の予想を覆す高い実用性。

 前述のように、DS3の骨格のベースは昨年フルモデルチェンジを行なったC3。それゆえ、プレミアム・コンパクトカーを狙うものの中にあっても、なかなか実用性の高いパッケージングを特徴とする。 この点でも、「まずは見た目からスタート」となったBMWミニやフィアット500などとは、開発の手法が少々異なっているわけだ。結果としてDS3には、3ドア・モデルながら大人4人がそれなりにくつろぐ事の出来るキャビンスペースや、そんな乗員がそれなりの量の荷物を持ち込んでも収容可能なラゲッジスペースがきちんと確保をされている。
 大きくて重いドアは、乗降性にマイナスの影響を与えているものの、ひとたび乗り込んでしまえば後席は意外にも快適。前席下への“足入れ性”に優れているのも大きな加点のポイントだ。
 後席よりも一段低くマウントされたドライバーズ・シートからの運転視界は、Aピラーは太めでも、低くマウントされたドアミラーのお陰でその周辺の“抜け”が優れているのが好印象。見た目優先からこのあたりの実用性にしわ寄せが及ぶパッケージングの持ち主も少なくない中で、これはDS3での見逃せない優位点だ。


1.6ターボ&6速MT車を試乗。

 シトロエンの本拠地パリを基点に開催された国際試乗会に用意されたDS3は、1・6リッター・ターボ付きの156psエンジンを搭載の6速MT仕様。BMWとの共同開発によるこのモデルに搭載のエンジンは、ミニ・クーパーSに搭載されるものと基本的に同一。ただし、ミニにはAT仕様が用意されているのに対し、こちらはMT仕様のみ。このあたりに、DS3がシトロエン車全体の“走りのイメージリーダー”的なテイストも演じようとしている狙いが見てとれる。
 実際、DS3の走りは、予想をした以上に活発な動力性能が印象的なものだった。
 加速の絶対能力は、いわゆる“ホットハッチ”的なキャラクターのモデルとして不足のない水準。低回転域からでもアクセル操作に対してレスポンスよくターボブーストが立ち上がるのは、この共同開発エンジンの見逃せない特徴だ。
 MTは、操作が確実に決まるしその際のストロークも過大ではなく、いわゆる「シフトワークを楽しめるアイテム」。ただし、走りの軽快さを演じるためにはクラッチペダルの踏力はもう少し軽くてもよかったかもしれない。
 ちなみに、0→100km/h発進加速タイムは7・3秒と発表されている。
 


走りでも放たれる強烈な個性。

 路面おうとつに対して、何とも当たり感が優しいフットワークが印象的だったC3の乗り味からすると、メカニズム上は共通部分が多いこちらDS3の乗り味は、予想外に“硬派”と言えるものだった。路面状況をダイレクトに伝えるステアリング・フィールや、さしたるロールも示さずにコーナーを駆け抜ける様は、いかにもスポーティな感覚が強い。「C3との兄弟モデル」という印象など殆ど意識をさせない。
 もちろんそこには、今回テストドライブを行なった仕様が、ターボエンジン搭載のホッテスト・バージョンに限られたという点は影響をしていよう。日本に導入されるモデルには、「4速ATとの組み合わせによる自然吸気の1・6リッター120psエンジン車も存在」するので、こちらの走りの印象はよりC3に近いものであるはずだ。
 ただし、いずれにしてもDS3の売りというのは、単に「少しばかり個性的な内外装の仕上げにのみあるわけではない」という事はハッキリしている。走りの個性の強さは、DS3に限らず今後の“DSシリーズ”にも踏襲されて行く可能性が大きそうだ。
 


シトロエンの期待を背負うDSブランド。

 同じフランスのプジョー社とは強い血縁関係を備えるグループ企業でありながら、「実は開発現場でも、終始強いライバル意識が散見される」と事あるごとに聞こえて来るのがシトロエンというメーカー。かつてからの実用モデルに加え、昨今はオープン・モデルやスポーツ・モデルというカテゴリーへの積極参入の姿勢が顕著なプジョー社の動きを横目に、実は自らもそんな個性溢れるモデルを手掛けたいと忸怩たる思いを抱いていたのがこのところのシトロエン社であったかも知れない。
 そんなこのメーカーにとって、いよいよスタートとなるDSシリーズは、だから「大いなる期待の星」でもあるはずだ。実用本位のクルマ作りを行なえばたちまち「シトロエンらしくない」と叩かれ、だからといって余りに風変わりなモデルに挑戦をすれば、自らマス・マーケットを逃すというパターンに陥らざるを得なかったのがこれまでのシトロエン社。
 唐突に降って湧いたかのようにも思えるこの“DSプロジェクト”は、だからそんなシトロエン社にとっての新たなるクルマづくりの体制の起爆剤となるものなのかも知れない。

問い合わせ先

シトロエンコール 0120-55-4106
http://www.citroen.jp/

主要諸元 SPEC DATA

グレード名
全長×全幅×全高(mm)3965 x 1715 x 1455
ホイールベース(mm)2455
トレッド 前/後(mm)1465/1455
車両重量(kg)1190
種類直4DOHC
総排気量(cc)1598
最高出力(kw[ps] / rpm)115(156)/6000
最大トルク(Nm[kgm] / rpm)240(24.5)/1400-3500
駆動方式FF
トランスミッション6速MT
サスペンション 前 マクファーソンストラット
サスペンション 後 トーションビーム
ブレーキ 前/後Vディスク/ディスク
タイヤサイズ205/45ZR17
車両価格(税込み・単位=万円)269.0(日本仕様)